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国際秩序研究会発足、岩間陽子氏と粕谷祐子氏が「戦後」の終わりと「グレーゾーン」の時代を語る
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毎日新聞·3 sa önce·🇯🇵Japan·Política

国際秩序研究会発足、岩間陽子氏と粕谷祐子氏が「戦後」の終わりと「グレーゾーン」の時代を語る

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#国際秩序#大国間競争#多極化#民主主義#権威主義#トランプ現象#グレーゾーン#国際政治
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変容する世界情勢を背景に、日本の研究者らが大国間競争や多極化など、今後の世界に影響を与えそうな課題を調査して発信しようと「国際秩序研究会」を発足させました。民主主義は退潮し権威主義が興隆するのか、再び大国が力で支配する時代が来るのか――。

研究会の共同座長である岩間陽子・政策研究大学院大教授(国際政治)と粕谷祐子・早稲田大政経学部教授(比較政治)による対談を3回に分けて紹介します。前編は「『トランプ現象』に終わりは来るのか」などがテーマです。司会は研究会の顧問、国分良成・アジア調査会会長が務めました。

「戦後」は終わり、グレーゾーンの時代に

――今の国際情勢をどのように捉えていますか。

岩間氏 今の世界秩序は第二次世界大戦後、いわゆる西側に作ったいろいろな制度を少しずつ改善して広げてきたものが多い。そこを支えていた米国の価値、力が揺さぶられ、場合によっては米国自ら壊しにかかっているような状況で、世界が右往左往したのがこの1年でした。80年たち「戦後」が終わったように思います。

いわゆるヘゲモニー(覇権)の交代があるのかというのは10年ほど前から意識されていたと思いますが、交代するとしたら中国に行くのか、インドに行くのか、19世紀のヨーロッパ的な多極体制になるのかと。ただし、この多極体制が機能するには共通のルールや価値の了解がないとうまくいきません。今はそこが決定的に欠けていて「とりあえずこれでやっていくしかない」という感じになっているのが、ミドルパワーの連携ということではないでしょうか。

粕谷氏 専門にしている比較政治学の観点から言うと、今の時代を切り取る一つのキーワードは「グレーゾーン」だと思います。米国の政治学者、フランシス・フクヤマ氏が著書「歴史の終わり」(1992年)で民主主義と共産主義が対決する世界の構図が終焉(しゅうえん)を迎えたと分析した頃は、民主主義の国と権威主義の国とはかなり明確に分けることができました。ところが、2025年に第2次トランプ政権が発足して以降、米国は権威主義体制になってしまったと指摘する政治学者が複数出ています。

一方、権威主義体制の方もどんどん民主主義を装う形になっているように思います。例えば、シンガポールについて日本では多くの人が民主主義の国だと思っているかもしれませんが、言論弾圧などさまざまな制約が存在しており、政治学的に見ると権威主義の国です。民主主義の国が権威主義に寄って来て、権威主義の国も民主主義に寄ってきていてグレーゾーン化し、まさに混沌(こんとん)とした時代になっているように思います。

トランプ氏去っても問題は消えず

――お二人の話で共通していたのは、米国をどう見るかということでした。今の状況は、29年1月の任期満了まで我慢すれば終わる「トランプの現象」なのでしょうか。それとも、さらに続く「アメリカの現象」とも言うべきものなのでしょうか。

岩間氏 欧州の国でもグレーゾーン的、権威主義的な傾向の政党がじわじわと影響力を強めています。そうした国では、いろいろな意味で中産階級が痛めつけられています。米国の場合も製造業に就いていた労働者階級とそのコミュニティーが傷ついていて、それが回復していません。世界の多くの国で社会や共同体における再配分のやり方を仕切り直さないと、社会の一体性を保てないところに来ています。それが最も先鋭的に表れているのが米国であり、トランプ氏がいなくなれば、それで問題が消えるとはとても思えません。

粕谷氏 比較政治学の分野で今一番のホットトピックが民主主義の後退という問題です。トランプ現象はその典型例という位置づけになっています。ただし、トランプ氏というのは、構造的な背景があって既に地殻変動が起きていたところで、出るべくして出てきた人なのだと思います。80年代、90年代に新自由主義による改革が先進国で行われ、所得格差が広がった。それを反映する形で社会的な分断、分極化も拡大した。

イデオロギー的な分断というよりは、例えば自分と違う政党を支持する人と娘を結婚させたくないというような感情的なレベルでの分極化がどんどん進んでいる状況です。さらに懸念されるのは、ポピュリスト政治家が民主主義を攻撃するいわゆる「トラッシュトーク」をし、それに対抗する形でリベラルな人々もトラッシュトークをするという負のスパイラルに陥っていることです。

また、対イラン軍事作戦は国際法違反だと多くの専門家や国際機関が指摘していますが、これに対する国際社会の対応がなされず、なし崩し的に継続していくと、トランプ氏と同じようなことをやる米大統領は今後も出てくるかもしれませんね。

アジア調査会と国際秩序研究会

アジア調査会は1964年に毎日新聞社が中心となって創立された。戦後、中国には共産党政権が成立したが、当時は国交がなく、日中間にいかなる関係を打ち立てるかが課題だった。初代会長の吉田茂元首相は、就任あいさつの中で「東洋問題、ことに中国問題が世界問題であり、この問題を解決する国が、いわゆる世界の大勢を制するような国であろうと考えている」と述べている。

さらに、74年発刊の「アジア調査会十年の歩み」の序文で2代目会長の経済学者、東畑精一氏は「わが国は戦争のために非常に多くの力を払った。しかし逆に平和のためにいくばくの努力をなしてきたか」と問い、調査会がアジア諸国の繁栄発展、世界平和に寄与することをあらためて誓った。

専門家らによる講演会の開催と調査・研究が活動の2本柱で、常設の「中国研究委員会」も置かれた。第9代となる現在の国分会長は「会で調査、研究を担った多くの専門家は、日本のオピニオンリーダーへと育った。その頃は学問と政策をつなぐことが自然な形でできていたと思う」と振り返る。

だがその後、調査・研究部門は弱体化。「そこを何とか復活させたいと、世界的な総合コンサルティングファーム『KPMGコンサルティング』と組んで、国際秩序研究会のプロジェクトを開始した」と、国分会長は語る。

国際秩序研究会は地域研究や経済安全保障、政治外交史の専門家らで構成。既に2月と4月に研究会を開催し「中国系大規模言語モデルの挑戦」「リベラル国際秩序と権威主義の変容」などの発表があった。研究会は今後も予定されており、それぞれの内容については今秋にまとめて公開する予定だ。

岩間 陽子(いわま・ようこ)氏

1964年生まれ。京都大大学院博士課程修了。在ドイツ日本大使館専門調査員などを経て現職。専門は欧州安全保障、ドイツ政治外交史。冷戦期欧州における軍縮・軍備管理にも詳しい。著書に「核の一九六八年体制と西ドイツ」など。

粕谷 祐子(かすや・ゆうこ)氏

1968年生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校博士課程修了。専門は政治体制論、東南アジア政治など。各国の民主主義の動向を調査するV-Dem研究所(スウェーデン)の東アジアセンター所長や、世界政治学会会長を務める。

【構成・西脇真一客員編集委員、写真・八木正氏】

This article was originally published by 毎日新聞.

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