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リーダーの疲弊は「合意形成コスト」が原因、罪悪感なく自己犠牲をやめるマネジメントとは
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リーダーの疲弊は「合意形成コスト」が原因、罪悪感なく自己犠牲をやめるマネジメントとは

L'essentiel

連続起業家の堀田創氏は、リーダーが疲弊する原因を「合意形成コスト」にあると指摘。支配、自己犠牲、操作の「3つの罠」を避け、摩擦と複雑さを低減する仕組み作りが重要だと語った。

Résumé généré par IA

Pourquoi c'est important

連続起業家の堀田創氏は、リーダーが日々の会議や調整業務に追われ疲弊するのは、能力の問題ではなく「合意形成コスト」が原因だと指摘。著書『マネジメントの原点』をもとに、罪悪感なく自己犠牲をやめるマネジメントを解説した。

Taille de police

「一日の大半が、調整で終わっていく」。会議と根回し、資料の作り直し、決裁のやり直し――そうやってリーダーがすり減る理由を、認知科学者で連続起業家の堀田創氏は「能力の問題ではない」と断じる。2026年6月24日のITmediaエグゼクティブオンライン勉強会で、堀田氏は自著『マネジメントの原点』をもとに、罪悪感なく自己犠牲をやめるマネジメントを語った。鍵は、目に見えない「合意形成コスト」にあるという。

一日の大半を奪う「合意形成コスト」とは何か

総論は賛成なのに各論で反対が出る。「なぜ私には事前に相談がなかったのか」という不満が噴出する。だから根回しをしておく。こうした調整を真面目にこなすほど、いいリーダーに見える。だが、そこには膨大なコストがかかっていると堀田氏は指摘する。「本来なら大事な業務は部下に任せ、自分は生産性のない調整業務をやる。でも、その調整がないと組織は動かない。だから管理職にとって、むしろそちらが重要な仕事にされてしまう」。しかも現場作業はAIで効率化できても、「AIは根回しをしてくれない」。自動化できない調整業務ばかりが手元に残っていく。

調整は心理的な負荷としても積み上がる。KPIを背負う中間管理職は、現場の不満と経営の要求の板挟みになる。「2~3人の期待を満たせないだけで、それがブーメランのように自己嫌悪として返ってくる」。自己肯定感を削っていく構造だという。

無駄の象徴として挙げたのが、決裁のための資料づくりである。「社長は2分で判断する。その2分のために2枚のスライドを作るのに、のべ100時間かけたりする。その100時間は何も生産せず、合意形成のためのコストにすぎない」。調整を除けば生産性はむしろ高いのかもしれない、と皮肉を込めた。

ただし、コストそのものを否定するわけではない。「妥当なコストはどうしても払わなければいけない」。問題は無自覚に払い続けることにある。払う価値を見極めて選ぶ。それが出発点だという。

「あなたのせいではない」――変えるべきは人ではなく仕組み

立ち回りが下手だから、調整力が足りないから。多くのリーダーがそう自分を責めてきた。堀田氏自身もそうだったと明かす。だが、立場も業界も違うリーダーが全員同じ壁にぶつかるなら、それは能力の問題ではない。「自分を責めるループをやめましょう、というのが今日の話です」。

では何を変えればよいのか。堀田氏は、変えてはいけないものと、変えられるものを切り分ける。相手の性格、価値観、能力、感情、本心。こうした領域に手を入れようとすると、たいていうまくいかない。モチベーションの低い部下を1on1で引き上げようとするのも、感情を操作する行為になりやすい。

対照的に、変えられるのは合意のつくり方、会議の進め方、情報の出し方である。エンジニアのプルリクエストは、アウトプットがルールに従っているかをレビューするだけの仕組みだ。「『うちはこういうルールだから従ってください』と淡々と言うほうが、比較的うまくいく」。変える先は人ではなく、環境とルールのほうだという。

リーダーが陥る3つの罠――支配・自己犠牲・操作

堀田氏は、合意形成をゆがめる典型を「3つの罠」として整理した。支配、自己犠牲、操作である。

第一の罠は「支配」。「自分で決めたほうが早い」というカリスマ型のリーダーシップは手っ取り早いが、コストを先送りしているだけだと堀田氏は釘を刺す。「ルールを勝手に作るほど、周りは意図をくみ取ってくれない。後から『聞いていない』という手戻りが必ず出てくる」。払わなかったコストが、後々さまざまな歪みとして出てくるのだ。

やっかいなのは、支配が双方の無意識の欲求として成立してしまう点だ。実力値1.1億円のところに上から1.3億円の売上目標が降ってくると、部下は不満を言いながらも、どこかで安心しているという。「自分で決めないほうがラク、という心理がある。本当に厳しいときは、人は不満すら言わない」。リーダーの側も同じで、無理だと訴える部下を守るうちに「部下のエゴの代表者」になっている。支配は、双方が無意識に求め合う「共犯関係」だと堀田氏は分析する。

こうした不健全な合意は、コストが一見すると低い。忖度してくれれば、チームワークはすんなり進むように見える。「ただ、必ず後でしっぺ返しが来る。とくにAI時代は日に日に状況が変わり、不健全な合意に頼ると歪みばかり起きる」。対する健全な合意とは、公平な情報があり、心理的安全性があり、各自が自分の意思で「いい」と思って動いている状態だ。維持には手間がかかるが、「空気は、言葉にすれば手放せる」。本音が出ているか、決定の理由が明確か。言葉にして点検すれば、不健全さは手放せるという。

「自己犠牲」と「操作」――善意がはらむ罠

第二の罠は「自己犠牲」である。堀田氏はウルトラマンを引き合いに出した。3分間戦って帰るヒーローに頼り続けるうち、人類は自力で怪獣を倒す気概を失う。リーダーが頑張るほど部下が育たない構図だ。しかも親身に動くリーダーほど部下に好かれ、信頼が厚いと錯覚する。「でも、それは信頼ではなく、『また助けてくれるだろう』と高をくくられている状態です」。

だからこそ「献身」と「自己犠牲」は分けて考える必要がある。チームが良くなることをやる献身は持続できるが、何でも引き受ける自己犠牲は燃え尽きる。ありがちなのが、大きなトラブルを「現場に迷惑をかけたくない」と一人で抱え込むケースだ。「トラブルシューティングこそチームワークの発揮どころ。マネージャーが全部抱えたら、誰も育たない」。抱え込みは衝突から逃げているだけで、組織の問題は残り続ける。

処方箋は「責任の線引き」である。「これはあなたの責任なので、あなたが対処してください。私は裏でサポートするが、明示的に求めてきたときだけです」。本人が負えないなら責任そのものを正式に放棄させ、誰が引き取るかを選べばよい。「誰かの責任を勝手に肩代わりすると、責任の負い方がわからない人を作ってしまう」。役割と決定権の明文化が、自己犠牲を仕組みで防ぐ鍵になるという。

第三の罠が「操作」である。「成長させてあげたい」「救ってあげたい」という善意ですら、相手の自律性を奪う操作になりうる。「救われると楽なので、二度と自分で狩りができなくなる」。人を操作する引き金として堀田氏が挙げたのが、「ハラスメント三兄弟」――優劣、一貫性、正義感である。「ここを越えれば上に行ける」と優劣で煽る。「前にこう言ったよね」と一貫性で縛る。「どちらが正しいと思う?」と正義感で黙らせる。いずれも相手に本音を押し殺させてしまう。

操作から身を守るために、堀田氏は「2回のチェック」を勧める。相手の主張を、まず「受け取るか」、次に「受け入れるか」に分けて考える。全部を受け取ると、それだけで傷ついてしまう。「聞かなくていい、受け入れなくていい、と気づくことが大事です」。マネージャーの側も、優劣・一貫性・正義感を使った話し方をしないことが要点だ。

その先に、健全な合意をつくる6つの対話ステップ(整える、見極める、受けとめる、間をおく、決める、締めくくる)がある。詳細は著書に譲るとしつつ、堀田氏が強調したのは到達点の現実性だった。「ゴールは全員が納得することではない。『反対だけど、従う』も健全な合意です」。「『おっしゃる通りです』より、『ピンとこないけれど一回乗ります』のほうがいい」。全員が納得するまで動けないなら、組織は遅くなる。

健全な合意を後押しするのが、リーダーの自己開示だ。「弱さを見せるふりをした自慢話ではなく、本当に弱さを見せる。『私はめちゃくちゃへこみやすい』と言ったほうが、心理的安全性は上がる」。命令を問いに変える工夫――「やっておいて」を「この案、いける気がするけど、どう?」に変える――も、相手の主体性を引き出すという。

マネジメントの原点は「摩擦×複雑さ」を下げること

3つの罠は、いずれも「摩擦」を生んでいた。講演の終盤、堀田氏は全体をひとつの式に集約してみせた。合意形成コストは、摩擦と複雑さの掛け算で決まる。著書では「F=μ×N(合意形成コスト=摩擦×複雑さ)」と定式化している。支配も自己犠牲も操作も摩擦を高め、結果としてコストを膨らませる。

摩擦を下げる王道は、健全な合意形成そのものだ。「『うちのチームはこうです。乗るかそるか、あなたの選択です』と儀式として問う。最初に『乗ります』と言ってもらえれば、後で問題にならない」。もうひとつの変数が複雑さだ。「まず10%だけAIを使ってみる。1000人の会社なら、使いたい200人に権限を与えるところから始める。複雑度が低いから合意が取りやすい」。合意しやすいことを選び、ひとつずつ丁寧に重ねる。この両輪が回るとマネジメントはうまくいく、というのが結論だった。

AIによる業務の自動化が進むほど、自動化できない「合意形成」という人間の営みが、マネジメントの中核として浮かび上がる。堀田氏が示したのは、リーダーの疲弊を精神論ではなく、摩擦(μ)と複雑さ(N)という操作可能な変数へと捉え直す視点だ。司会が最後に重ねたのは、アドラー心理学の「課題の分離」との響き合いだった。明日から動かせるのは、人の性格でも運でもなく、合意のつくり方そのものである。一つずつ責任に線を引くこと――そこに、疲れを終わらせる糸口がありそうだ。

Questions ouvertes

  • リーダーは具体的にどの程度の「合意形成コスト」を許容すべきか?
  • 「3つの罠」を回避するための具体的なチェックリストは?

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This article was originally published by ITmedia.

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