L'essentiel
東京・秋葉原の無差別殺傷事件から18年。事件現場の献花台には花束が手向けられたが、事件を伝える貼り紙や僧侶の読経がなくなり、風景の変化に遺族らが戸惑いを感じている。
Résumé généré par IA
7人が死亡し、10人が重軽傷を負った東京・秋葉原の無差別殺傷事件から18年がたった。
事件と同じ6月8日、小雨交じりの現場交差点の歩道には、2026年も多くの花束や飲み物が手向けられていた。ただ、毎年献花に訪れる人たちは、これまでとは少し異なる風景に気づいていた。
「事件を伝える貼り紙がなくなっていた」「今年は卒塔婆(そとば)が置かれていなかった」
現場には発生直後から献花台が設けられ、昨年まで供えられた花や飲み物が整えられていた。そして毎年、その日には読経する僧侶の姿があったが、今年は見当たらなかった。
何があったのだろうか――。現場を訪れていた記者は、僧侶が近くに住むと聞き、自宅を訪ねた。
自分にできるのは「供養」
集合住宅の一室から出てきたのは足取りがおぼつかない男性だった。太平寺東京布教所の僧侶、田辺泰慧(たいけい)さん(78)だ。
2008年6月8日の日曜日の午後。法要の帰り道に、車内で流れるニュースで事件を知った。幼少期から神田で育ち、現場近くの寺で僧侶をしている身として、いてもたってもいられなかった。
発生からまもないころ、秋葉原の現場近くの寺で、事件の犠牲者を供養するための読経を始めた。以来、毎年6月8日には、事件現場の交差点近くで読経を続けてきた。献花台に供えられた花や飲み物を整え、参拝者を出迎えるのも僧侶の役目だった。
「事件を風化させたくない。犠牲になった方々の冥福を祈りたい。その一心でやってきた」
田辺さんは、そう話した。しかし、事件から18年が経ち、事件を伝える貼り紙は撤去され、卒塔婆も置かれなくなった。読経も、僧侶の姿も見当たらなかった。
「私が年を取り、足腰も弱ってきた。これからは、近くの寺で、これまで通り供養を続けるつもりだ。ただ、事件を伝えるものがなくなり、風化していくのではないかと心配している」
田辺さんは、そう話した。事件から18年。現場の風景は変わりつつある。
事件を風化させないために、遺族や関係者は、事件の記憶をどう伝えていくのか、模索が続いている。







