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政治資金裏金事件で、元参院議員の大野泰正被告(67)が約5100万円の寄付を政治資金収支報告書に記載しなかった罪で在宅起訴された。検察は罰金150万円を求刑したが、被告は無罪を主張。政治資金規正法の限界や科刑の妥当性が問われている。
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Why It Matters
政治資金規正法違反事件で、元参院議員の大野泰正被告が約5100万円の裏金を収支報告書に記載しなかった罪に問われている。検察は罰金150万円を求刑したが、被告は無罪を主張している。
「国会議員は高度の倫理性と廉潔性が求められる」
3月26日、東京地裁の104号法廷。検事は政治家だった被告の責任を厳しく非難した。
被告は元秘書と共謀して約5100万円の寄付を政治資金収支報告書に記載しなかった罪に問われていた。
だが、続く検事の言葉に記者は拍子抜けした。求刑は罰金150万円が相当――。
政治家の事務所が5000万円超の「裏金」を作っても、罰金はわずか150万円。果たして科刑として適切なのだろうか。
「報道されるまで知らなかった」
罪に問われているのは元参院議員の大野泰正被告(67)だ。
祖父は自民党初代副総裁を務めた大野伴睦(ばんぼく)氏。父は元運輸相、母も元参院議員と政治家一家で育った。
所属していたのは自民党の清和政策研究会(旧安倍派)。2023年11月に発覚した裏金事件で中心となった派閥だ。事件の責任をとる形で解散した。
科刑について考える前に押さえておきたいことがある。大野元議員は全面的に無罪を主張していることだ。
「この件が報道されるまで、収支報告書に記載があるのかないのかさえ知らなかった」
「誰との間でも、政治資金収支報告書の虚偽記載について共謀など一切していない」
元議員は25年9月の初公判で潔白を強調している。
政治家の使命とは……
これに対し、検察側は徹底的に「矛盾点」を突いた。
元議員は18~22年に安倍派からパーティー券収入のノルマ超過分計約5100万円のキックバック(還流)を受けたのに、収支報告書に記載しなかったとして虚偽記載の罪で在宅起訴された。
派閥裏金事件では80人以上の自民党議員側の収支報告書に不記載や誤記載があった。その中で約5100万円は最多の不記載額だった。
大野元議員へのキックバックは1回で1000万円に及ぶこともあり、検察側は元秘書だけでなく、自ら派閥事務所に現金を受け取りに行ったことがあったとした。
一部は元議員のクレジットカードの引き落とし口座に入金され、飲食費などのカード支払いに充てられたとも主張。収支報告書の記載内容が元議員に報告されたこともあったとした。
現金を自ら触り、消費しながら、不記載の認識がないとは言わせない――。そんな立証方針だった。
だが、大野元議員は決して強気を崩さなかった。
記事後半では検察が罰金150万円を選択するしかなかった背景、政治資金規正法の限界を解説しています
「次の世代により良い国を渡していくのが使命」
「事務的な仕事は私の仕事ではない」
政治家は国の将来を考え、資金管理などの事務は秘書の仕事という論理を法廷で展開した。
さらにキックバックされたカネは、いずれ派閥に返す「預かり金」だとも主張した。
虚偽記載は、収支報告書に記載すべき収入や支出との認識がなければ犯罪の故意がなくなり罪は成立しない。
秘書との共謀、不記載の認識を否定する元議員の主張が認められれば判決は無罪となる。
元議員への判決は23日午前10時に東京地裁で言い渡される。
世論だけでは……
では、有罪となった場合はどうなるのか。
政治資金規正法の虚偽記載の法定刑は5年以下の禁錮(現在は拘禁刑)または100万円以下の罰金。大野元議員は5年分の罪に問われているため、刑法の「併合罪」の規定で法定刑の上限が引き上げられる。禁錮刑は1・5倍となり7年6月、罰金刑は年数分積算されて500万円となる。
裁判所が検察の求刑を超える判決を言い渡すことはまれだ。有罪になったとしても、最も重くて求刑通りの罰金150万円となる公算が大きい。
「世間が厳しい刑を求めているからという理由でいきなり重くすることはできない」。ある検察OBは150万円という金額を導いた古巣の考えを推測する。
事件では12人が起訴(在宅や略式含む)された。既に8人の有罪が確定し、不記載の金額と量刑の重さは比例している。
①旧安倍派の元会計責任者 約13億5000万円/禁錮3年、執行猶予5年
②旧二階派の元会計責任者 約3億8000万円/禁錮2年、執行猶予5年
③谷川弥一元衆院議員 約4300万円/罰金100万円
④二階俊博元衆院議員の元秘書 約3500万円/罰金100万円
⑤旧岸田派の元会計責任者 約3000万円/罰金100万円
⑥萩生田光一衆院議員の元秘書 約1900万円/罰金30万円
有罪が確定した主要な政治家らを並べるとこうした具合になる。
「法律は感情ではない」
不記載額が約5100万円の大野元議員は、旧二階派の元会計責任者と、谷川元議員の間に位置し、不記載額は谷川元議員に近い。
政治資金規正法違反は「立件額が1億円以上で公判請求(起訴)、1億円未満で略式起訴」が連綿と続いてきた検察の処分傾向だ。
裏金事件では不記載の政治団体が多数に上り、東京地検特捜部は立件ラインを引いて捜査に当たったとされる。
参考にされたのは20年の「桜を見る会」を巡る政治資金規正法違反事件。安倍晋三元首相の元秘書を略式起訴した際の不記載額約3000万円だ。
検察審査会の「起訴相当」議決を受けて、起訴猶予から一転して略式起訴された萩生田議員の元秘書を除けば、不記載3000万円以上1億円未満の人が原則略式起訴されている。
ただし、略式起訴は罰金刑に同意することが条件。このため起訴内容を争う方針を示した大野元議員は在宅起訴され、求刑で他の事件との均衡が重視される結果となった。
罰金では抑止効果がないのではという記者の問いに、ある検察幹部は「しょうがない。法律は感情で決めるものでもない」と答えた。
刑罰とは別の仕組みを
「国民感覚では甘いという意見があることは理解できる」
政治資金の問題に詳しい岩井奉信・日本大学名誉教授(政治学)はこう指摘する。
一方で今回の罰金150万円の求刑は「現行法と前例の中で限界ではないか」とも語る。
「そもそも政治資金規正法違反事件は略式処分が多く、法廷で議論が公開されない」。岩井名誉教授は、検察処分の「ブラックボックス化」を問題視する。
その上で、政治資金を監視する独立した委員会をつくり不記載や虚偽記載が起きないよう制度の透明化を図ること、収支報告書の修正で許すのではなく不記載は不当な所得として追徴課税できる仕組みにすることを、求められる点として挙げる。【菅健吾、五十嵐隆浩、佐藤緑平】
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What to Watch
AI outlook — possibilities, not facts
大野元議員に有罪判決が下される可能性が高い
Likely · Within days
政治資金規正法の改正議論が加速する
Very likely · Within months
Open Questions
- 罰金150万円は妥当か
- 政治資金規正法の限界は何か
- 独立した監視委員会の必要性






