Quick Look
SpaceXのIPOを終えた投資家のウッザマン氏が、同社の成長の秘密とイーロン・マスクCEOの情熱を語る。ロケット再利用によるコスト削減と衛星インターネットStarlinkの将来性、そしてマスク氏がSpaceXに注ぐ時間について詳述。
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Why It Matters
SpaceXは2002年にイーロン・マスクCEOが創業した宇宙開発企業。ロケット打ち上げ事業から始まり、現在は衛星インターネットサービスStarlinkなどを展開している。
SpaceXが、米NASDAQ市場に上場したのは6月12日。新規株式公開(IPO)で史上最大となる750億ドルを調達し、初日の取引は5億株(約800億ドル)を超えた。この3日後、日本に滞在していたウッザマン氏を訪ねると、上場後の感想を率直に述べた。
「正直ほっとしました。ロケットって爆発するじゃないですか。打ち上げに失敗すると、投資家から『大丈夫なのか』と電話がかかってきていました。でも、やはり信じてよかったですね」(ウッザマン氏)
ペガサスのメイン事業は、未上場の新興企業に出資して支援すること。もう一つの事業が、企業が設立する投資ファンド「コーポレートベンチャーキャピタル」の運用支援だ。同社は、日本の大企業からも資金を預かってSpaceXに投資していた。ウッザマン氏は「みなさんもかなりほっとしていましたね」と日本企業の反応も明かした。
SpaceXがロケット業界にもたらした「大きな転機」
SpaceXは、イーロン・マスクCEOが2002年に創業した。当初はロケットの打ち上げが事業のメインだった。しかし、ウッザマン氏は打ち上げ事業については「そこまで成長していない」と指摘した。
「SpaceXに最初に投資した頃、ロケット打ち上げビジネスの市場規模は約1兆3000億円とされており、今も同程度です。SpaceXは、同市場で60~70%のシェアを握り、2025年時点で約7500億円の規模でした。打ち上げビジネス自体はそこまで成長していないのですが、打ち上げのコストが下がっているので、収益は上がるでしょう」(ウッザマン氏)
エンジニアでもあるウッザマン氏は、SpaceXが低コストを実現した最大の理由を、打ち上げの際に空中で切り離される第1段ブースターエンジンを回収し、再利用できるようにしたことだと説明した。
「以前はブースターエンジン1基を製造するのに数百億円かかり、さらに打ち上げ後は燃えてなくなっていました。SpaceXの主力ロケット『Falcon 9』では、切り離された第1段部分をドローン船で回収することで、再利用を可能にしています。1基当たりのコストが50億~90億円くらいまで下がったことが、ロケット業界にとって大きな転機でした。次世代ロケット『Starship』では、ステーションに戻ってきたロケットを箸のようなアームでキャッチする技術を開発しており、テストも成功しています」(ウッザマン氏)
「これがフューチャーだと思った……」 Starlinkの衝撃
打ち上げコストの低下によって生まれたのが、衛星インターネットサービス『Starlink』だった。Falcon 9が各国・各社の衛星を宇宙に運ぶ際、空きスペースがある。そこに相乗りして、SpaceXが自社で製造した衛星を大量に宇宙に運び始めた。
衛星ベースのインターネットサービスを始めるとマスクCEOから聞いたときに、ウッザマン氏は成長を確信したという。
「新しい衛星インターネットの説明を受けて、これがフューチャー(未来)だと感じました。今のインターネットは『Wi-Fi』などを使っていても結局はケーブルでつながっていて、基本的に固定電話と同じです。従来の衛星インターネットは、上空3万~4万キロの高軌道に衛星があり、運が悪ければつながりません。Starlinkは上空約750キロの低軌道に約1万基の衛星を打ち上げているので、通信速度も速く、よくつながります」(ウッザマン氏)
ウッザマン氏は、ペガサスがSpaceXへの追加投資を決めた際の、マスクCEOの説明を教えてくれた。
「世界にいる数十億人のうち、今インターネットが使えているのは全体の70~75%ほどです。Starlinkを始めたとき、マスクCEOは『残る25~30%の人たちにこのサービスを提供したい。だからSpaceXにもっと投資してほしい』と言いました。これがStarlinkの最初の目標でした。恵まれていない人たちを助けたいと言われれば、投資家も心が動きます。私もそれで追加投資を決めました。Starlinkを毎日使っているユーザーは現在1000万人くらいなので、目標人数を考えるとまだまだ伸びると思います」(ウッザマン氏)
多忙なマスク氏が週3日割くSpaceX 「彼のベビーだ」
再利用ロケットや衛星インターネットなどの構想を、事業化してきたSpaceX。同社はこれ以外に「Starshipによる有人宇宙旅行」「宇宙経由で世界の主要都市を30分ほどで結ぶ交通網の構想」などを掲げている。ここまで着実に成長できた背景を、ウッザマン氏は「シークレットプロジェクトだったから」と語った。
「最初に投資をしようとした際、SpaceX側の承認プロセスが非常に厳しいものでした。承認を得た後も『プロジェクトの内容を誰にも言ってはいけない』と言われました。だから、SpaceXに出資した数十人の投資家は、これまで一言も話してきませんでした。それに、マスクCEOは事業計画を一切公表しません。投資家は『数字』を聞きたがるのですが、マスクCEOは売り上げも、利益の話も、事業のことも何も説明せず、会社のビジョンを話しているだけでした」
事業内容の説明を受けられないのに、ウッザマン氏はなぜSpaceXへの出資を拡大したのか。その理由は、マスクCEOのSpaceXへの向き合い方にあった。
「マスクCEOはSpaceXのほかに、米Teslaや米xAIなどものすごく多くのものを抱えていますよね。投資をしている中で気付いたのは、マスクCEOが1週間のうちSpaceXに3日間を使っていることです。60~70%をSpaceXに注力していることになります。つまり、SpaceXは彼にとっては最大のベビーです。このことが私たち投資家にとっては勇気になりました」
SpaceXは、マスクCEOのビジョンと経営手腕、技術革新によってさまざまな宇宙ビジネスを軌道に乗せてきた。同社は今、宇宙企業とは違う顔を見せているという。ウッザマン氏が語る「もう一つの有望な事業」について、第2回目の記事で紹介する。
What to Watch
AI outlook — possibilities, not facts
Starlinkのユーザー数は今後も増加し、未接続層へのサービス提供が進む。
Very likely · Medium term
SpaceXはロケット再利用技術をさらに進化させ、打ち上げコストを一層削減する。
Likely · Medium term
Open Questions
- Starshipによる有人宇宙旅行の具体的な計画は?
- 宇宙経由の交通網構想の実現性は?
- SpaceXの今後の追加投資計画は?






