Quick Look
企業を取り巻くリスクが増大する中、地政学リスクや気候変動への対応が急務。サプライチェーンの脆弱性に加え、有事の際の情報収集体制の遅れが課題。OSINTなどを活用し、平時から情報収集・分析体制を強化することが真のBCPにつながると指摘。
AI-generated summary
Why It Matters
企業を取り巻くリスクが増大しており、その背景には国際情勢の変化に伴う地政学リスクと気候変動という2つの大きなトレンドがある。製造業においては、多層化・複雑化したサプライチェーンが脆弱性の要因となっている。
企業を取り巻くリスクが増大している背景には、国際情勢の変化に伴う地政学リスクと、気候変動という2つの大きなトレンドがある。
例えば地政学リスクの例としては、昨今の中東情勢に伴う原油輸入の停滞によるプラスチックや、ゴム製品の原料となるナフサの供給不足などがある。
また気候変動については、例えば気象庁のデータによると、国内における1時間降水量80ミリ以上の強い雨は、1980年頃と比較して、発生頻度がおおむね2倍になっているという。
こうした中、製造業の脆弱(ぜいじゃく)性の要因となっているのが、多層化・複雑化したサプライチェーンだ。
製品を1つ出荷するために、直接的な取引先だけで数百社、その先まで含めれば数千社に及ぶサプライヤーが関わることも珍しくない。そのうちのたった1拠点が火災や自然災害、あるいは現地のデモやストライキによって停止しただけで、サプライチェーン全体が停止し、出荷停止や受注停止という事態につながる恐れがある。
初動の“前”で差が付く 有事で機能する体制とは
これらのリスクに備え、企業はBCPの整備を強化し、危機発生を想定したシミュレーションを重ねている。それにもかかわらず、有事の際に対応が遅れる理由はどこにあるのか。
米重さんはその原因を「初動の『前』段階、すなわち『危機をいつ、どうやって知るか』という情報収集体制への備えが抜け落ちているためだ」と指摘する。
「多くの企業が『情報は現地から報告が上がってくるもの』という前提に立っています。しかし、深刻な災害や政情不安が起きた現場ほど、通信網の遮断や混乱によって現地からの第一報は滞り、情報はブラックボックス化します。自然に情報が上がってくるという前提が、有事に通用するとは限りません」
また、特定のメディアが発信する情報だけに依存することにもリスクがある。地域の小さなニュースなどは報道されないこともあり、中には偽情報が紛れている可能性もあるからだ。
インシデント発生時における数時間のタイムラグは、経営判断に大きな影響を与える。
「1時間でも早く、インシデントを察知して動き出せるかどうかが重要です。早く知ることができれば、他社に先んじて代替部品の調達や別ルートの確保といった“次の手”を押さえることができますが、出遅れれば、その選択肢を確保することが難しくなります」
危機管理は情報戦へ 「速報性」と「多元化」が鍵
不確実性が高まる時代において、企業の危機管理のポイントはどこにあるのか。米重さんは、重要なのは「情報の速報性」と「情報源の多元化」であり、そのための環境を平時から整えておくことが不可欠だと提言する。
近年注目されているアプローチの一つに、SNSやWeb上の公開情報から有用なインテリジェンスを抽出する「OSINT」(オープンソース・インテリジェンス)がある。
例えば、突発的な事故や軍事行動が発生した際、公式発表よりも早く、現地にいる人々によって写真や状況がSNSに投稿される。一見、断片的な情報に思えるが、これらをリアルタイムで網羅的に収集し、統合して分析することで、現地の状況の深刻さを迅速に把握できるようになる。
こうした膨大なデータを常に監視し、情報の真偽を見極め、自社への影響度をスコアリングする体制を、自社だけで構築するには限界がある。こうした情報の収集・分析プロセスを自動化・高効率化できる外部のデジタルソリューションを、平時から自社の危機管理体制に組み込むのも一手だ。
外部環境を巡るリスクが今後大きく減少することは期待しにくい。直面してから慌てて見直すのではなく、平時にこそ「初動の前」にある情報収集体制に不十分な点がないかを点検すること。こうした備えが、日本の製造業が必要とする真のBCPと言えるだろう。
What to Watch
AI outlook — possibilities, not facts
企業は平時から情報収集体制の強化に投資を増やすだろう。
Likely · Medium term
サプライチェーンの寸断による影響が顕在化し、企業のBCP見直しが加速するだろう。
Very likely · Short term
Open Questions
- 具体的にどのようなデジタルソリューションが有効か
- OSINTを活用する上での具体的な課題や注意点は何か
- 日本製造業以外で、同様のリスクに直面している産業はあるか
- 平時の情報収集体制強化に、企業はどの程度の投資を行うべきか






