Quick Look
日本TCSは、多重下請け構造によるユーザー企業の要件定義能力の喪失とベンダー依存が、生成AI活用の本質的な障害であると指摘。国内の若年層人材減少とGCCの海外拡大を対比し、自社主導のデータガバナンスとコア・ノンコアの線引きによる「IT主権」の回復を提唱。内製と外注、国内と海外を組み合わせた人材確保策としてGVICの設立やニアショア・オフショアの活用を示す。
AI-generated summary
Why It Matters
1990年代後半、日本企業はITをノンコアと判断し、情報システム子会社への切り出しとさらに外部ベンダーへの委託による多重下請け構造が定着した。これによりユーザー企業は要件定義能力を失い、曖昧な仕様渡しとブラックボックス化が進んだ。
奪われた能力とは、自社の業務プロセスと必要な要件を、自らの言葉で説明する力だ。
日本TCSの森氏によると、起点は1990年代後半にある。当時、多くの日本企業は「ITはノンコア(本業外の業務)であり、アウトソースすべきもの」と判断した。IT関連業務を情報システム子会社へ切り出し、そこからさらに外部ベンダーへ委託する多重下請け構造が定着した。
この判断から約30年がたった。ユーザー企業が要件や仕様を曖昧なまま渡し、ベンダーが前提条件を代わりに設定する。結果として機能の抜け漏れがある過剰設計のシステムと、ブラックボックス化した仕様が残ったという。
同社は、生成AIの活用が部分最適やPoCどまりで終わる本質的な原因を、ユーザー企業側の主導権の欠如とベンダー依存の構造の2点に整理した。
人材市場で起きている変化
説明会では、国内の製造業における34歳以下の就業者数の推移と、世界のGCC(グローバルケイパビリティセンター)動向を対比するデータが示された(図1)。国内の人材が減る一方で、企業が人材を求める先は国外へ広がっている。
日本TCSは、AIネイティブな企業に必要な力を次の3つに整理する。
同社は、この3つを兼ね備えた人材プールを社内のリソースだけで構築するのは難しいとしている。
「IT主権」を取り戻せるか
国家や企業が自前のAIを囲い込む「ソブリンAI」が関心を集めている。日本TCSは、その前提として自社の業務やシステム、データに対する自己決定権の確立が必要だと位置付けた。AIは単独では機能せず、自社の業務やシステム、データが伴って初めて効果を発揮するという。
同社が挙げる論点は2つある。一つは、自社主導のデータガバナンスと、移行の自由を意味するポータビリティの確保だ。もう一つは、内製するコア領域と外部に委託するノンコア領域の線引きだ。データの流出や特定ベンダーへのロックインは避けるべきだという。
主権の喪失はユーザー企業だけの問題ではない。ITサービス企業の側も主権を失えばサービスがコモディティ化し、価格競争に転じてAIプラットフォーマーに従属すると説明した。
人材の確保策として示されたのが、内製と外注、国内と海外を組み合わせる考え方だ。海外に自社専用の拠点を置くGCCは、この整理では「海外での内製」に当たる。TCSは2026年6月、GCCの構築を支援する組織「GVIC(グローバルバリュー&イノベーションセンター)」を新設した。日本TCSも、顧客の要件に応じてニアショアやオフショアを組み合わせる支援体制を置く。
森氏は、設計や構築といった下流工程はAIが代替できる時代であり、重要なのは「何をしたいか」という要件を定義することだと述べた。同社は、要件定義に自ら責任を持たない顧客とは取引しない場合もあるとの姿勢も示した。どのサービスを使っても主導権は顧客側に置く。この考え方を「We manage, you control」と表現した。
What to Watch
AI outlook — possibilities, not facts
日本TCSのGVICを通じたニアショア・オフショアの組み合わせによる支援体制が、2027年までに国内製造業の30%以上で採用される
Possible · Within years
Open Questions
- GVICの具体的なサービス内容と料金体系は何か
- ニアショア・オフショアの組み合わせにおける最適なバランスはどのように決定されるか
- 国内の若年層IT人材確保のための具体的な施策は何か






