Quick Look
アシックスの役員は、2週間に一度の夢の語り合いと役員全員の店舗研修・マラソンボランティア義務化により、社内の会話を活性化し、グローバルで同じ方向を向くきっかけとなったと語る。コロナ禍ではEC基盤の強化と上位モデルへの生産シフトで利益率を底上げし、選手の走法に合わせた「EDGE」「SKY」などの製品開発を「選手ファースト」で推進。AI時代のリーダーには「夢を語り、ブレない信念」が求められると強調した。
AI-generated summary
Why It Matters
アシックスはスポーツ用品メーカーとして、アスリートへのスポンサーシップと製品開発を行っている。コロナ禍での店舗休業やサプライチェーン混乱を経験し、ECへのシフトと利益率改善に取り組んできた。
でも、それに対しても私が逃げずに答えました。そうやって2週間に一度、改革の意図や「まずランニングシューズで世界一になろう」「テニスでも1番を取ろう」という夢をしつこく語り続けました。これが結果として、社内の会話を活性化させ、グローバル全体で同じ方向を向くきっかけになりました。
──経営陣が現場に出る「店舗研修」やマラソン大会でのボランティアも、役員全員に義務化しているそうですね。
そうです。年に1回、私を含めた役員全員が自社店舗の現場に立ったり、バックヤードで在庫管理や清掃をしたりしています。私が原宿の店舗に行った際も、表で接客するのではなく、裏でダンボールから届いた靴を商品棚に綺麗に並べる作業をしました。
なぜやるか。それは、僕らの商売でお金が落ちる瞬間というのは、オフィスではなく「お店でお客さまが商品を買ってくれた瞬間だから」です。そこを経営陣が肌感覚で理解していないとダメなんです。
神戸マラソンのゴール地点で、走ってきたランナーにタオルを渡すボランティアもやりましたよ。完走した関西のおじさんランナーから、からかわれながらも(笑)。現場の熱気やリアルな空気感を肌で知ることは、経営判断のブレをなくす上で絶対に必要なプロセスなんです。
利益率を底上げした構造改革 背景に「選手ファースト」
──コロナ禍の店舗休業やサプライチェーンの混乱など、数々の危機をどう乗り越えたのですか?
運も味方しました。実は2018年からEC(eコマース)の自社基盤を強化していたため、2020年に店舗が閉鎖された時もすぐECにシフトできたんです。
また、工場がストップして作れるシューズに足数が限られたときは「作れる数が決まっているなら、単価が高く利益率の良い上位モデルから優先的に作ろう」と切り替えました。これが結果的に値引き販売を減らし、会社全体の利益率を底上げする体質改善につながりました。
──これまで多くのアスリートと契約されてきましたが、スポンサーシップや製品開発のスタンスで変えた部分はありますか?
本当に素晴らしいアスリートの方々と契約し、共に歩んでこられたことには心から感謝しています。開発スタンスで大きく変えたのは「選手ファースト」の徹底です。
もともと選手に寄り添った開発はしてきましたが、その考え方がさらに進化して、選手一人一人のスタイルや走り方に合わせて僕らが製品をつくっていくという意識がより強くなっています。
ピッチ走法(歩数を増やしてスピードを上げるタイプ )の選手には「EDGE」(エッジ)、ストライド走法(歩幅を広げてスピードを上げるタイプ )の選手には「SKY」(スカイ)というように、走りの特徴に合わせて最適なシューズのモデルを提供します。トップアスリートが大会で勝ち、その姿を見た一般ランナーがSNSで「アシックス最高」と自発的に写真や動画を拡散してくれるのです。
インフルエンサーマーケティング以上に、この一般ユーザーの方々のリアルな熱量と、SNSでの口コミが、いま世界中で絶大な効果を生んでいます。
AI時代の経営者に求められること
──AIの活用が進む中で、これからの時代に経営者や人間に求められる役割とは何だとお考えですか?
アシックスでも画像認識AIを使って、マラソン大会の写真から「どのランナーがどのメーカーの靴を履いているか」のデータを一瞬で分析するなど、AIは徹底的に活用しています。
ただ、AIというのは過去のデータを学習して最適化するのが得意な一方、全くゼロからの「ひらめき」や「クリエイティブなイノベーション」を生み出すことはできないのではないでしょうか。
だからこそ、人間であるリーダーの役割は「夢を語り、社員と共有すること」に尽きます。「来年までに売り上げをいくらにする」という目標も大事ですが「日本発の匠の技術で、世界一のグローバルブランドになるんだ」というワクワクする夢を示せるか。
そして一度言った方針を簡単にブレさせないこと。上が少しでもブレると、現場は大揺れになります。AI時代だからこそ、ブレない信念と人間味を持ったリーダーシップが問われているのだと思います。
What to Watch
AI outlook — possibilities, not facts
選手の走法に特化したシューズラインの拡充により、一般ランナーからの支持がさらに高まる
Likely · Within months
Open Questions
- 具体的な利益率の改善幅はどの程度か
- 「選手ファースト」の製品開発におけるコスト増はどのように吸収しているか
- AIを活用したマラソン大会の写真分析の精度と実際の活用事例は何か







