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遺伝性血管性浮腫(HAE)の理解促進のため、全国のランドマークがラベンダー色にライトアップされた。希少疾患HAEは誤解されやすく、患者は差別や困難に直面。患者団体は「患者の語り」を通じた理解と受容を訴えている。
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Why It Matters
遺伝性血管性浮腫(HAE)は、体のさまざまな部位が突然腫れる難病で、希少疾患である。アレルギーと誤解されやすく、確定診断までに時間がかかることが多い。
全国各地のランドマークが5月16日夕、ラベンダー色にライトアップされた。毎年この日は、体のさまざまな部位が突然腫れる難病「遺伝性血管性浮腫(HAE)」の理解促進を目的とした催しがある。患者団体のNPO法人「HAEJ」代表理事、松山真樹子さんは「SNSで寄せられる『いいね』や応援コメントなどを見る限り、大きな効果があると感じている」と話す。
HAEは遺伝子の変異が原因で、唇やまぶた、胃腸などさまざまな部分が繰り返し腫れる病気だ。のどに症状が出ると呼吸困難になり、命に関わることも。5万人に1人という希少な疾患で、10~20代で始まることが多い。
C1インヒビターというたんぱく質の遺伝子に異常があるタイプ(1型、2型)と、その遺伝子には異常がないタイプ(3型)に分類される。大半が1、2型だ。
アレルギーと誤解されやすく
症状が数時間から1週間程度で消えることや、浮腫の発作が起きない時には健常の人と変わらないためにアレルギーと誤解されやすく、国内の推計患者数2500人のうち、確定診断を受けた人は2割程度とみられる。
2016~17年に広島大などが実施した調査では、初めて症状が表れてから確定診断を受けるまでに平均15、16年かかっていた。
近年HAEを取り巻く環境は良くなっており、1、2型に対しては発作を抑制する治療が登場している。
広島大名誉教授の秀道広医師によると、医師国家試験に疾患名が登場したこともあり、10年前に比べて認知度が上昇。確定診断までの年数も短くなっているという。
それでも患者団体や医療関係者、製薬会社が啓発に力を入れるのは、医療者側や社会の理解不足によって、患者が困難に直面しているからだ。
HAEJの松山さんによると、社会人の場合、仕事を休んだり中座したりすることで肩身が狭くなる。児童・生徒では、学校側に正しい知識がないために不安がられる。休む必要のない体育や遠足・修学旅行を許可されなかった例もある。
交際や結婚の拒絶、出産を反対されることもあるという。
日本難病・疾病団体協議会などが24年に実施した患者対象の実態調査でも、友人や親族、医療者から遺伝に関する差別的な言動を受けた例が確認された。協議会は「正しい知識が広がらないと差別はなくならない」と指摘している。
「患者の語り」が社会の理解に
追手門学院大の松繁卓哉教授(医療社会学)は、理解を深めるためには「患者の語り」が重要だと指摘する。
患者はモヤモヤや不安を言葉にして語ることで思いを整理できる。一方、医療者側は対話を通じて、患者がどのような生活を送りたいかを知り、医療が目指す「治癒」「寛解」「検査数値の改善」とすりあわせていく。そして、社会は患者の語りから患者の心の内や暮らしに思いをはせることができる。
松山さんは夫をHAEの発作による咽頭(いんとう)浮腫で亡くし、娘もその際に同じ病気だと診断された。娘は患者会の活動を通じて病気のことを理解しており、不安を感じず通学も習い事もしてきた。
「患者は楽しく明るく生活できる」というメッセージを伝えるため、HAEJは体を動かす活動や顔を出しての啓発キャンペーンを実施している。
松山さんは力を込める。「怖がらずによく知り、学び、理解し、受け入れること。いつ自分の身に何が起きるか分からない。『一緒にやっていこう』という受容と優しさが、偏見解消につながるのでは」
HAEのシンボルカラーであるラベンダー色の光には、そんな思いが込められている。【菅沼舞】
Open Questions
- HAEの根本的な治療法はいつ確立されるのか
- 社会全体のHAEに対する理解度はどの程度向上したのか
- 患者が直面する差別の具体的な事例は今後どう変化していくのか






