IBMが人とデジタルワーカーの協働を推進、4000超のAIエージェントが450プロジェクトで稼働
Quick Look
日本IBMの川上結子氏は、同社が人とデジタルワーカー(AIエージェント)の協働を2023年から推進し、4000を超えるデジタルワーカーが450を超えるプロジェクトチームで稼働していると説明。業務フローの再設計と全社展開により、2025年実績で45億ドルの生産性向上効果を創出したと主張。AI活用の成果を経営レベルに結びつけるためには、業務レベルと基盤レベルの両方での再設計が必要だと指摘した。
AI-generated summary
Why It Matters
IBMは2023年から『人とデジタルワーカーの協働』をクライアントゼロの取り組みとして推進しており、全社を490の業務フローに分解し、そのうち70のプロセスをAI前提で再設計している。
これについて、早川氏に続いて登壇した日本IBMの川上結子氏(常務執行役員 成長戦略統括事業部長)が「人とデジタルワーカーの協働」について、IBM自身のユースケースを紹介しながら説明した。ちなみに、デジタルワーカーとはAIエージェントのことだ。同社は自社のユースケースの説明でデジタルワーカーと表現しているので、本稿でもそのまま表記する。
「今、IBMの同僚は人間だけでなく、4000を超えるデジタルワーカーが450を超えるプロジェクトチームで共に働いている。コンサルタントやアナリスト、アーキテクト、エンジニア、プロジェクトマネージャー、デザイナー、クリエイターなど、これまで人が務めてきた職種をデジタルワーカーが担っている」
川上氏は図2を示しながら、こう説明した。
では、人は何をしているのか。同氏は、「方針を決めること」「責任を取ること」「倫理的な判断」「例外への対応」の4つを挙げた。その上で、「この取り組みは単にAIツールを導入したという話ではない。チームの構成が変わり、メンバーが人間だけではなくなった。これが現在のIBMの働き方の姿だ」と述べた。
図3は、IBMにおいてデジタルワーカーを“人材”として運用する仕組みを示したものだ。同社では、数十の職種別のデジタルワーカーが、従業員と同じスキル認定のバッジを取得して、それぞれのプロジェクトチームに配備されている。川上氏によると、「採用、認定、配備、そして任務が終われば退任と、人事と同様の仕組みがデジタルワーカーに対しても適用されている」とのことだ。
IBMが「人とデジタルワーカーの協働」を推進する理由
IBMではこうした「人とデジタルワーカーの協働」を2023年からクライアントゼロ(ゼロ番目の顧客)の取り組みとして推進しており、現時点で「全社を490の業務フローに分解し、そのうち70のプロセスをAI前提で再設計し、(2025年実績で)45億ドル規模の生産性向上の効果を創出した」(川上氏)という。これにより、AIユースケースとしては幅広い業務で150を超え、生み出した原資を注力領域に再投資しているとのことだ(図4)。
川上氏は同社による調査から、AI活用を成果につなげるための条件についても、図5を示しながら説明した。
図5の左は、縦軸に「AIを適用しただけか、仕事を再設計したか」、横軸に「一部の業務で試行しただけか、全社に展開したか」を示した図だ。調査結果として、仕事を再設計し全社に展開して成果を上げている企業は15%にとどまったという。ただし、この15%の企業は同業他社と比べて収益で73%、営業利益率で11%上回ったことも分かったという。これをして川上氏は、「AI格差がこうした調査結果にも表れている」と述べた。
なぜ、多くの企業におけるAI活用は個別業務の成果にとどまり、経営成果に広がらないのか。「それは、経営成果に結び付けるための基盤が不足しているから」という川上氏は、AIによる成果の全社展開を阻む課題として次の4つを挙げた。
では、この4つの課題を解消するために何が必要なのか。川上氏は「いずれの課題も、業務の再設計(業務レベル)だけでなく、再設計と実行拡大を続ける企業運営の仕組み(基盤レベル)が必要になる」と述べて、4つの課題それぞれについて業務レベルと基盤レベルの対応を示した(図7)。
その上で、「人とデジタルワーカーの協働を図る上でつまずきやすいのは、基盤レベルの内容なので注意していただきたい」と述べた。
なお、企業におけるこうした取り組みを支援するIBMの新ソリューション「IBM Enterprise Advantage」の内容については、発表資料(米IBMによる5月発表の翻訳)をご覧いただきたい。
AIツールを使うのではなく、デジタルワーカーと協働する
最後に、筆者から一言。今回の日本IBMの会見で聞いた「IBM自身のユースケースとしての人とデジタルワーカーの協働」は、まさにこれからの企業経営の在り方を示していると感じた。改めて強調したいのは、「AIツールを使うのではなく、デジタルワーカーと協働する」ということだ。
さらにいえば、AI格差は企業だけでなく個人にも起こり得る。それを解消するためには「社会基盤のためのAI」の推進も不可欠になるだろう。そして、社会基盤のためのAIと企業における経営基盤のためのAIの関係についても整合性を求められるようになるだろう。そうした視点で、今後もこれらの動きを注視したい。
What to Watch
AI outlook — possibilities, not facts
IBMは『人とデジタルワーカーの協働』モデルをクライアント向けに『IBM Enterprise Advantage』として提供し、導入企業の拡大を図る
Likely · Within months
Open Questions
- デジタルワーカーの具体的な導入コストはどの程度か
- 従業員のスキル再教育や転換支援策はどのように行われているか
- AI格差を埋めるための『社会基盤のためのAI』の具体的な施策は何か





