Quick Look
伊藤忠商事と電通グループは、伊藤忠の事業基盤と電通の広告・マーケティング・テクノロジーを組み合わせ、ITサービスとリテールメディア・データの2領域で成長を加速させ、新たな収益の柱を育てる戦略的提携を発表。電通総研とCTCの業務提携、およびゲート・ワン、データ・ワンと電通の3社によるリテールメディア領域の提携を含み、5年後に500億円以上の新たな取引創出を目指す。
AI-generated summary
Why It Matters
電通総研は1975年に電通と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社として設立され、2000年に東証一部上場後、独立系SIerとして成長してきた。伊藤忠商事はここ5年ほどファミリーマートを中心にリテールメディアを展開してきた。
伊藤忠商事の細見研介氏(常務執行役員 第8カンパニープレジデント)は、今回の戦略的提携の狙いについて「伊藤忠グループの幅広い事業基盤と、電通グループの広告、マーケティング、テクノロジーの力を掛け合わせ、ITサービスとリテールメディア・データの2領域で成長を加速させ、新たな収益の柱を育てる」と説明する。
電通総研は1975年、電通と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社として設立。2000年の東証一部上場を経て、独立系SIerとして成長してきた。電通総研の岩本浩久社長は、今回の提携を「設立時が第1の創業、東証一部への上場を第2の創業とすると、生き残りをかけた2025年からの変革期である第3の創業を確かなものにする施策」と位置付ける。
ITサービス領域では、CTCと電通総研が業務提携契約を締結する予定だ。
電通総研は製造業や金融業を中心とした顧客基盤を有しており、ビジネス部門(LOB)向けの戦略・業務コンサルティングやアプリケーション開発、パッケージ導入の知見を持つ。CTCは通信キャリアや流通業を中心とする顧客基盤を背景に、IT部門を支える大規模システム、クラウド、ネットワーク、セキュリティなどのインフラ構築・保守運用に強みがある。
両社のクロスセル(相互送客・一体提案)を推進することで、アプリケーションからインフラ基盤、保守運用までの一気通貫支援を実現する。
リテールメディアとデータ領域では、伊藤忠グループのゲート・ワン(東京都港区)、データ・ワン(東京都千代田区)と電通の3社が業務提携を締結した。電通の持つ生活者理解、企画力、クリエイティビティ、広告主への提案力を掛け合わせ、サイネージの商品力向上や購買データを活用したデジタル広告・分析サービス、3社共同での提案を展開し、国内リテールメディア市場そのものを拡大していく狙いだ。
──今回の戦略的提携による具体的な相乗効果は?
伊藤忠商事 野田俊介専務執行役員: 電通総研とCTCを含むデジタル事業群全体での協業により、5年後に売上高で500億円以上の新たな取引創出は十分に可能と見込んでいる。加えて、フィジカルAIやサイバーセキュリティ領域での共同プロダクト開発、アジアを中心とした海外展開の連携も進める。
──電通はセブン‐イレブン・ジャパンともリテールメディア新会社を立ち上げ、伊藤忠商事はセブン銀行への出資などで接点がある。今回のリテールメディアでの取り組みは、他のコンビニや小売事業者へも広げていく考えはあるか。
電通グループ 綿引義昌副社長: リテールメディアは電通グループにとっても大きな成長領域の一つだ。購買データや店頭ネットワークを活用したサービスを今回の提携を通じて高度化していきたいと考えている。
ただし、日本のリテールメディアは仕様が各社バラバラで、発展途上にある。提携を通じた高度化はもちろんだが、まずは市場全体の拡大が極めて重要だと認識している。
伊藤忠商事 細見研介常務執行役員: ここ5年ほどファミリーマートを中心にリテールメディアを展開してきた。売り上げは想定以上に推移しており、非常に大きな成長の可能性を感じている。しかし現状は各社が独自にバラバラに取り組んでいる状態であり、業界全体での標準化や指標作りはこれからだ。
また、私たち自身参入してまだ5年程度であり、広告業界そのものに対する知見が浅いのも事実である。日本ナンバーワンの実績と展開力を持つ電通を「先生」とし、われわれは「出来の悪い生徒」としてしっかり教えていただきたい。
──CTCを中心としたデジタルバリューチェーンを見ると、戦略・業務コンサルティング領域には米Boston Consulting Group(BCG)とのジョイント・ベンチャー(JV)などが存在する。電通総研との棲み分けや重複をどう整理するのか。
伊藤忠商事 野田俊介専務執行役員: 電通総研の最大の強みは製造業や金融業への深い業務知見だ。AIによって開発作業そのものが自動化・縮小していく中で、最後に最も強い差別化要素となるのは「顧客の業務知見があるかどうか」である。この深い業務知見を伴うコンサルティング領域は伊藤忠グループ内で手薄だった部分であり、電通総研が加わることに意味がある。
──伊藤忠側にとっては、62%対38%という出資比率はマイノリティ出資となる。過半数を握らずマイノリティーにとどまることがベストなのか。
伊藤忠商事 細見研介常務執行役員: 電通側がマジョリティーを維持する方針であることは最初から聞いていた。それを踏まえた上で、当社としてはマイノリティーという立場であっても、ITサービスとリテールメディアという2つの注力領域で十分強固な協業が可能であると判断した。現時点で出資比率の引き上げなどは全く考えていない。
──なぜ完全子会社化を選ばなかったのか。
電通グループ 綿引義昌副社長: 電通グループ内でも、電通総研の資本政策については過去2年半以上にわたり議論を重ねてきた。その選択肢の中には当然、100%完全子会社化という案も含まれていた。
しかし、電通総研は電通グループの成長センターであり中核企業である。国内のAI開発機能も電通総研にリソースを集中させており、電通グループの連結子会社という位置付けは外せなかった。
──グローバル事業でのシナジーについてアジア中心という話があったが、伊藤忠の海外ネットワークを活用して具体的にどのように伸ばしていく構想があるのか。
電通グループ 綿引義昌副社長: 現段階では全くの白紙だ。電通グループの事業の約6割は海外展開しており、伊藤忠もグローバルネットワークを持っているので、将来的な協業の可能性は大いにあると考えている。
しかしながら、現段階ではまず電通総研の国内ITサービスドメインの強化や、伊藤忠と進めるリテールメディア事業の確立が最優先課題だ。これらが進捗した次のステップとして海外展開も具体的に検討していく。
What to Watch
AI outlook — possibilities, not facts
5年後に売上高で500億円以上の新たな取引が創出される
Likely · Within years
フィジカルAIやサイバーセキュリティ領域での共同プロダクト開発が進められる
Possible · Within years
Open Questions
- 海外展開における具体的なロードマップは示されていない
- 出資比率62%対38%の長期的な維持戦略は明確ではない
- 標準化や指標作りにおける業界全体への影響度は未定







