特殊詐欺被害額、過去最悪1414億円超 2025年、若者の安易な加担続く
特殊詐欺の被害が止まらない。2025年の被害額は1414億円超にのぼり、過去最悪を更新した。アルバイト感覚で加担する若者は後を絶たない。
「軽い気持ち」で手を染めた後、異なる形で犯罪組織との関わりが切れた2人の男性が毎日新聞の取材に応じた。
バー店長、当初は月給60万円
鹿児島県内で生まれ育った翔太(25)=仮名=は、父や友人の影響で小学校5年生から野球に没頭。高校でも白球を追い続けた。
卒業後は地元の農協で働き出すも、野球と同じようなやりがいを見いだせない。上司との人間関係にも悩み、3年ほどで退職した。
職を転々とする中、知人の先輩がバーを開業予定で店長を探していることを聞きつけ、飛びついた。歩合制だった給料は、月60万円にのぼったこともあったが、客足が鈍り、次第に報酬はなくなった。
実家暮らしで食事には困らなかったが、車のローンが残っていて交際費も必要だった。消費者金融で100万円ほど借りた。でも、収入がないので、期限までに返済できない。家に届いた催促状を見た父が肩代わりしてくれた。
「1カ月だけ」で始めた「高額案件」
4カ月ほど勤めたバーを辞めて仕事を探していた24年秋、インスタグラムで「高額案件の仕事」を見つけた。
求人をうたうアカウントにダイレクトメッセージを送ると、すぐに返信があった。
債権回収の仕事で日当は2万6000円。県外での「仕事」なので交通費も支給する。電話でそう伝えられた。
翌日、秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」で面接を受けた。ビデオ通話で自分だけ顔を映し、免許証の提示を求められた。
翔太は「1カ月だけのバイト」として、姿を見たことがない「ミシマ」と「ヤブキ」を名乗る人物の指示を仰いだ。
福岡県に向かい、指定された住宅のポストから通帳を回収。教えられた暗証番号を入力し、郵便局で50万円を引き出した。
次は名古屋に移動。高齢女性からキャッシュカードを受け取った。「受け子」の仕事だった。
翔太はここで犯罪に加担していることに気付く。「銀行員のふりをして」との指示を受けたからだ。
でも、立ち止まれなかった。
免許証に記載されている住所から自宅に押しかけられるかもしれない、家族に迷惑をかけてしまう……。
不安を抱えながらも、福岡-東京間を行き来してキャッシュカードと通帳を使って現金を引き出し続けた。総額は1000万円を超えた。
「高額案件の仕事」を始めて7日目。名古屋市内の銀行の現金自動受払機(ATM)で通帳が出て来なかったため会議室に通された。その後、警察に逮捕された。通帳は使用停止の措置が取られていた。
翔太はこの時、「これ以上被害を出さずに済む」と思い、ほっとしたという。
引き出した金は、すぐにミシマらに指定された口座に振り込んでいた。2万6000円を日当として差し引いていたはずだが、手元に残っていたのは3万円ほどだった。
後半では逮捕された翔太の思いをたどります。指示役として詐欺行為に加担したもう1人の男性の記事はこちらです
「何かあったら何でも言ってね」
翔太は詐欺や窃盗などの罪で起訴された…






